太陽系外惑星

太陽系外にある惑星の存在は、恒星の周りを惑星が回るという地動説が広まった16世紀ころから考えられるようになってきましたが、本格的に観測を検討し始めたのは19世紀から。以後、20世紀なかばまでに系外惑星の候補ではないか、という星もいくつか挙げられましたが、結局否定されました。あまりにも距離がありすぎるため、恒星ですら光の点でしかないのに、惑星を観測するのは不可能だったわけです。
ところが1950年代に観測アイデアが登場します。それがドップラー分光法(視線速度法)と、トランジット法(食検出法)。どちらも直接観測するのが難しいことから、間接的に観測する手法として考案されました。
その結果、1992年に初めてパルサーPSR B1257+12に太陽系外惑星が発見されます。パルサーという特殊な天体で最初に発見されるという驚きの結果でした。主系列星の系外惑星も1995年に発見されます。

ドップラー分光法とは、惑星が恒星の周りを公転する際に、惑星の重力の影響で恒星もわずかにブレるように動くため、恒星のブレをそのドップラー効果を観測することで惑星の存在を推定するもの。当然、惑星の動きが、主星に対して影響しやすいほど観測できるため、相対的に恒星の質量が小さくて惑星が大きいほど見つけやすくなります。一方で、複数の惑星がある場合や、恒星が連星だった場合、恒星の活動が激しかったりすると精度が落ちてしまいます。ドップラーを使うのではなく、位置を測定することでブレを観測する方法もあります。
トランジット法は、地球から見て、恒星の周りを公転する惑星が恒星の手前を横切るとき、その惑星に遮られて恒星の光が僅かに減ることを観測することで惑星の存在を推定するもの。公転しているのであれば、定期的に恒星の光は遮られるため、惑星と断定できます。遮る量で惑星の大きさもわかりますし、複数の惑星を見つけることもできます。恒星の光量を調べればよいのですから、かなり遠方の星系でも観測可能です。一方で、主星から遠く離れた惑星はその分遮る大きさも小さくなるため見つけにくく、軌道が傾いている惑星も見つけにくくなります。恒星の活動が活発だったり、巨星であると見つけにくいという欠点もあります。
この両方を組み合わせることで精度を上げることもできます。またこれをもとにしたいくつかの観測方法も考え出されました。
この他に重力レンズの僅かな差から惑星の存在を検出する方法もあります。主星から離れた惑星や、小さな惑星も見つけ出すことができますが、精細な観測が必要になることと、背景にレンズ効果を確認できる天体が必要なこと、惑星の重力分を検出するため、主星は小さい方が見つけやすいといった条件が必要になります。

系外惑星の観測初期の頃は、上記の観測方法で比較的発見が容易な、恒星の直ぐ側を回る大型のガス惑星(ホットジュピター)ばかりが見つかっていたため、宇宙では太陽系のような星系のほうが珍しく、地球のような生命の生まれやすい惑星は殆ど存在しないのではないか、という説もありました(※1)
しかし近年は、大気圏外に望遠鏡衛星を打ち上げて赤外線などを使い、惑星を直接観測することもできるようになるなど、観測技術は著しく進歩し、数千個の系外惑星が発見され、地球サイズや地球以下の小さな惑星も見つかってきています。また惑星の詳細な状態も観測できるようになってきました。
銀河にはで2000億以上の恒星があり、その多くに惑星があることも確実になり、銀河だけで惑星数は数百億、そのうちの数%が地球型惑星だとしても相当な数です。銀河の数も数千億から2兆以上とも言われ、それらにも同様に膨大な恒星と惑星があるわけです(※2)。水があり、生命の存在可能な領域(ハビタブルゾーン、ゴルディロックスゾーン(※3))にある惑星も相当な数に上ると見られます。
しかも、地球に生命が誕生した頃は、今と違いかなり過酷な環境だったことを考えると、すくなくとも地球外生物と言えるものは「存在する・しない」ではなく、かなり存在する、というのが、多くの科学者の考えです(ただし高度な文明を持つかどうかはまだ賛否両論ですが)。

地球に比較的近い、数光年以内の恒星にも複数の惑星が見つかっています。そのため、レーザーや太陽光を利用して加速する小型宇宙探査機で近隣恒星系を探査するという計画も立案されています。数十年後には、系外惑星の映像を直接見ることができるようになり、太陽系外生命体も見つかっているかもしれません。

※1:レアアース仮説といいます。希少鉱物のレアアースではなく、生命の発生した地球のような惑星は稀である、という仮説です。恒星の直ぐ側にガス惑星がある場合、そこに遷移するまでの間に、地球のような惑星は星系からはじき出されてしまう。太陽系のような地球型惑星と、ガス惑星が並んでいる安定した星系のほうが珍しい、すなわち生命が発生する星系も珍しい、という理論。
※2:銀河の星の数は小さい銀河で数百万、大きい銀河だと100兆個もある。銀河の数も、観測できる範囲で2兆以上ともいわれる。宇宙そのものは超高速で膨張するため、観測できない領域が広がっているので、実際の数はもっと多い。
※3:ゴルディロックスゾーンとは、「ちょうどよい領域」という意味。イギリスの童話「ゴルディロックスと3匹のくま」に登場する少女ゴルディロックスが、熊のおうちで「ちょうどよい具合」のものばかり選んだことから、「ゴルディロックス」が「ちょうどよい」という意味で使われる。心理学、医学、経済学、工学、生物学などでも使われる用語。天文学では、熱くもなく寒くもない「生物が発生し生存できるちょうどよい領域」のこと。


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