ジャイアント・インパクト説
地球の衛星である月がどうやって誕生したかについては、古くから様々な説が唱えられてきました。
主なものとしては、地球と同時に誕生した双子説や、地球がマグマオーシャンだった頃に自転の遠心力で分離したマグマが冷え固まってできた説、他所で誕生した月が地球の引力に捕らえられた捕獲説などが有力視されていたものの、いずれも現在の月の状態を説明するのに不十分でした。
1946年、カナダの地質学者レジナルド・アルドワース・デイリーが、地球に天体が衝突してもぎ取られたものが月となったという説を発表しますが、学界では受け入れられませんでした。1975年になってウィリアム・ハートマン とドナルド・デービスによって再びこの説が唱えられ、以後、コンピュータの発達によるシミュレーションなどから、徐々に有力な説となっていきました。
この説では、太陽-地球系のラグランジュ点L4に存在した火星ほどの大きさの惑星(※)テイアが、軌道が不安定になっていった結果、地球をえぐるように激突。
もぎ取られた地球のマントルと砕けたテイアのマントルは宇宙空間に飛散し、その一部が集まって月を形成したというもの。テイアの鉄のコアは地球内部へと落下し、地球のコアと一つになり、地球のコアが大きいのはこのためだともいいます。
冥王星とその衛星のカロンも同様の過程を経て成立したと言われ、最近では恒星系の初期には比較的頻繁に起こりうる現象だと考えられています。
なお、テイアの名前は、ギリシャ神話の月の女神セレーネーの母親の名前から名付けられました。
なお、近年、新たな異説も出ている。ジャイアント・インパクト説では、衝突した惑星の成分が月に多く含まれるはずだが、月の成分は地球とほぼ同じであることから、より小規模の天体が十数回衝突し、その都度もぎ取られた地球の破片が集まってできたのが月であるとする。但しこの説にも、そう都合良く何度も小天体が衝突するか疑問を唱える意見もある。
※:中心となる天体Aとその周囲を公転する天体Bの系で、天体Bの軌道上の前後60度の位置(ラグランジュ点のL4とL5でA・Bと結ぶ正三角形の頂点)は、力学的に非常に安定しているため、そこに別の天体が存在することがある。これをトロヤ群小惑星と呼び、惑星サイズではトロヤ惑星とも呼ぶ(最初に見つかった木星軌道上のラグランジュ点にある小惑星がアキレスだったため、アキレスの参加したトロヤ戦争から名付けられた)。現在の地球にもトロヤ群小惑星2010TK7がひとつ発見されている。
ラグランジュ点はこの他にBの前後(L1とL2)と、Aを挟んだ反対側(L3)にもあるが、L4とL5がもっとも安定している。ガンダムなどSF作品に出てくるスペースコロニーも、大体このラグランジュ点に作られる。
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