2006年
冥王星、惑星から除外される

太陽系の惑星は、かつて9つあるとされました。水金地火木土天海冥で覚えた人も多いはず。1930年に冥王星が発見されて以降は9惑星が常識となっていました。
その後、さらに惑星はあるのではないか、ということになり、様々な創作作品でも10番目以降の惑星が登場します。
2005年7月、小天体2003 UB313(エリス)の発見の発表がありました。エリスは冥王星クラスの天体です。第10番惑星の発見か、と話題になります(※1)。ところが、異論が出るようになりました。冥王星もエリスも大きさとしては他の惑星に比べてかなり小さく、軌道も大きく傾いており、他の8惑星とは明らかに違うからです。
そもそも、冥王星が発見された当初は、もっと大きな惑星だと考えられていました。当時の観測技術では、冥王星のアルベド(光の反射度)が高く、それまでの天体と比べて比較し、想像を働かせていたためでした。ところが、1978年、衛星カロン(※2)が発見されたことで、カロンのアルベド分を引いた上に冥王星とカロンの両方の質量計算が可能になったことで、大幅に下方修正されてしまったわけです。
2006年、チェコのプラハで国際天文学連合総会が開かれ、惑星の定義を決めるための議論が行われました。当初は、冥王星、冥王星の衛星カロン、小惑星ケレス、2003 UB313(のちのエリス)が惑星とみなされることになり、惑星は12個と決定します。ところが、天文学者の多くは、すでに冥王星などの天体を、惑星という基準に当てはめることには否定的で、強い反対の声が噴出し、原案は見直され、全く逆の決定として、8月24日、太陽系の天体は、「惑星」「dwarf planet(準惑星)」「Small Solar System Bodies(太陽系小天体)」の3つのカテゴリが定義されることになり、冥王星やケレス(※3)、エリスなどは準惑星となりました。
これらは、ほとんどの天文学者にとっては、妥当な決定でしたが、一般人や占星術関係には猛反発を買う結果となりました。学術的には準惑星でも、一般の人にとっては、冥王星には惑星の一員としての愛着があり、「降格処分」に不愉快な思いをしたからでしょう。

※1:エリスは、太陽から97天文単位の距離にある冥王星型準惑星。直径が2400Kmほどあり、冥王星より若干大きいと言われる。エリスはトロイア戦争のきっかけとなった三美神の争いを引き起こした女神。惑星論争を引き起こしたためこの名前になったとも。
※2:カロンは、冥王星本体の大きさ(直径2300km)と比べて直径1200kmもあるかなり大きな衛星で、二重星という見方をする学者もいる。実は冥王星を発見した時の写真にはカロンらしき出っ張りが写っている。カロンは冥界の川の渡守カローンから来ている(冥王星=プルートーが「冥王」であるのに合わせている)。
※3:ケレスは最初に発見された小惑星第1番であり、小惑星帯で唯一極端に大きな天体。直径約950km。大地母神、農業神であるケレースから来ている。
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